1. はじめに

海外の最新研究論文を読んで情報収集したいけれど、英語で書かれた文献は読むのに時間がかかってしまうものです。医療現場でそんな悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。

中には翻訳サイトに文章をコピー&ペーストし、辞書を引きながら何とか読んでいる方もいるでしょう。しかし、それでは手間がかかり効率的とは言えません。専門知識があっても言葉の壁があると、重要な論文を読むのをつい後回しにしてしまいがちです。

そこで頼りになるのがAI翻訳という新しいツールです。今回はGoogle Chromeの拡張機能「PLaMo翻訳」を使って英語論文を素早く読み解くライフハックをご紹介します。

このツールは日本のPreferred Networksとグループ会社のPreferred Elementsが開発した高精度の翻訳モデルです。2025年の公開後、すでに1万人以上が利用してその翻訳品質に高い評価を得ています。

引用：https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000156310.html

英語が苦手でも論文の内容を短時間で把握できるようになります。

まずは準備です。Chromeウェブストアから「PLaMo翻訳」の拡張機能をインストールしましょう。

PLaMo翻訳は英日翻訳特化のAIモデルです。現在は9月末まで無料で試用できる期間が設けられています。初回利用時にはPFNの無料アカウントかGoogleアカウントでのログインが必要です。手順自体はシンプルです。インストールとログインが完了すれば、ブラウザのツールバーに翻訳アイコンが表示され、準備完了となります。

2. PLaMo翻訳を使ってみよう！

実際の使い方を見てみましょう。PubMedで英語論文（例として抄録部分）が表示されているページを開き、Google Chromeの拡張機能としてPLaMo翻訳の拡張機能アイコンをクリックします。

この拡張機能がページ上のテキストをまとめて翻訳します。画像や書式は元のレイアウトのまま日本語に置き換えて表示してくれます。

ページ全体だけでなく、選択した一部分だけを翻訳することも可能です。

設定画面で自動翻訳オプションをオンにしておけば、ページを開いたとき自動で翻訳が始まります。手動で都度実行する手間が省けるので便利です。

翻訳が実行されると、英語の本文が段落ごとに日本語表示に切り替わります。見出しや箇条書き、引用文献の番号などもレイアウトが崩れません。

初めから日本語で書かれたページを読むような感覚で内容を追えます。翻訳後の文章にマウスカーソルを重ねると、その段落の英文オリジナルがポップアップ表示されます。

細かなニュアンスもすぐ照合できます。英語と日本語をワンタッチで行き来できるので、専門用語の確認も容易です。まずは抄録部分だけ翻訳して概要をつかみ、重要そうなら全文を読む――という使い方も効率的でしょう。

では、PLaMo翻訳を使うと英語論文を速く読めるのはなぜでしょうか。その大きな理由は翻訳の質にあります。PLaMo翻訳は大量の日本語・英語データで訓練された大規模言語モデルを応用した翻訳システムです。英語⇔日本語の訳出で非常に滑らかで自然な文章を生成できます。原文の細かな情報も漏らさず反映します。同じ内容を繰り返したり、一部が訳抜けしたりしないよう工夫されています。

他社ツールでは一部の内容が翻訳されなかったり、装飾テキストの語順が乱れたりすることがあります。しかし、PLaMo翻訳ではそうした問題がほとんど起こりません。例えば他の機械翻訳では専門用語がそのままカタカナに直訳されてしまうことがあります。PLaMo翻訳なら文脈を考慮して適切な日本語の専門用語に置き換えてくれるため、訳文を読んだとき内容がスッと頭に入ります。

さらに、文章が論文の抄録だと判断される場合、訳文は論文調の「〜である」体に統一されます。そのため全体に読みやすい厳格な文体が保たれます。質の高い日本語訳が得られるので、辞書を引きながら原文を読むより格段に早く内容を理解できるでしょう。なお、Chrome標準のページ翻訳機能に比べてもPLaMo翻訳のほうが専門的な内容でも自然で正確な和訳が可能です。また、PLaMo翻訳は非常に長い文章にも対応しています。英文なら約8万字まで一貫性を保って翻訳可能です。長めの論文全文であっても一度に処理できる設計なので「翻訳途中で途切れる」という心配もありません。

翻訳の速度や操作性の良さも読解スピード向上に一役買っています。翻訳処理はクラウド上で行われ、一般的な論文の長さであれば数秒程度で日本語表示が完了します。一度翻訳したページは結果がブラウザ内にキャッシュされます。そのため、後で開き直してもすぐ日本語が表示されます。実際、「この1か月でDeepLを使わなくなり、PLaMo翻訳の拡張機能に頼り切りになった」という声も聞かれています。それほどPLaMo翻訳の品質と使い勝手が優れている証と言えるでしょう。例えば、新薬の海外臨床試験結果を急いで調べたい場合でも、PLaMo翻訳を使えばブラウザ上で瞬時に和訳を閲覧できます。PubMed以外の海外の医学ニュースサイトやメーカーの情報ページでも同様に活用でき、幅広い情報収集に役立ちます。忙しい診療の合間でも素早く論文の要点をつかめるため、情報収集の効率は飛躍的に高まります。

英語論文のハードルを下げるこのライフハックは、小さな工夫ですぐに始められます。まずは興味のある論文でPLaMo翻訳を試してみてください。AIの助けを借りて英語情報に触れるうちに、語学への苦手意識も和らぎ、本当に知りたい内容に集中できるようになるでしょう。情報収集や学習にかかる時間を短縮できれば、そのぶん診療や研究に充てられる時間も増やせるはずです。最初の一歩を踏み出せば、日々の情報収集や学習がぐっと効率化されます。